多くの移民が暮らす多民族国家であるカナダは、教育事情も日本とは異なります。カナダのフレンチイマージョンシステム(日英バイリンガルを目指す教育方法)を中心とした教育をわかりやすく紹介し、日本の現状とこれからの英語教育のあり方について考えます。

カナダと日本の教育ってどう違うの?

バイリンガルが育ちやすい教育システムって聞いたんだけど、どんなの?

では、まずは子供たちの現状をご紹介し、続いてカナダの教育の特徴を上げますね。
カナダの子供たちの現状
バイリンガルは当たり前
私の在住するカナダ、特にトロントは世界中から人が集まっており、人口の半分は移民で構成されているため「人種のモザイク」と呼ばれています。モザイクはひとつひとつの色が異なっていながらも大きなひとつのアートを形成しています。このように、さまざまな人種、民族が住んでいながらも個々のバックグラウンドを大事にするのが、カナダの良いところだと感じます。
それゆえ、両親が外国からの移民だったり、片親が移民だったりという家庭環境から、2言語以上話す子供の割合が多いです。中には、父親がイタリア人、母親が日本人でカナダに住んでいるという例もあり、子供は父親とはイタリア語、母親とは日本語で話し、学校の授業や友人と話すときには英語、ということも珍しくありません。
オンタリオ州の学校の種類
学校の区分が州ごとに異なるため、オンタリオ州の例を上げます。学校は公立と私立、そしてカトリックスクールに分かれています。それとは別に、教育プログラムごとに3種類あります。
英語学校
通常の教育システムである「イングリッシュプログラム」を実施している学校です。幼稚園からスタートし、授業は英語で行われます。第二言語としてのフランス語は小学4年生から始まり、授業はすべて英語とフランス語半々を使って行われます。

この教育を受けた夫の意見では、フランス語が身につく生徒は少ないとのことでした。
フレンチイマージョン校
英語だけでなくフランス語も話せるようになるためのバイリンガル教育、「フレンチイマージョンプログラム」を実施している学校です。ちなみに、カトリックスクールも英語学校とフレンチイマージョン校があります。
導入される学年は教育委員会によって異なります。私の住んでいる地域では小学1年生からスタートするので、幼稚園は英語学校に通い、小学校に上がる時に「フレンチイマージョンプログラム」を導入している学校に入学します。幼稚園と小学校は同じ校舎になるので、もしその学校が導入していれば、学校を変える必要はありません。
「フレンチイマージョンプログラム」では、学年によって英語とフランス語の授業の割合が変わります。
・1年生ーフランス語だけでは理解できない部分を英語で説明
・2、3年生ー全ての科目がフランス語
・4年生からー午前と午後を境に、英語とフランス語の授業が切り替わる

フレンチイマージョン校では、フランス語も英語もバランスよく学べるため、どちらも身につけることができます!
フランス語学校
授業がすべてフランス語でおこなわれる「フレンチプログラム」を実施している学校で、第二言語として英語を学びます。生徒の授業だけでなく、親への連絡もすべてフランス語でやりとりされるため、フランス語圏出身の親が子供を通わせることが多いです。

フランス語圏に将来的に住む予定がある、もしくは親が子供にフランス語を学ばせたいという強い意志がある場合、こちらの学校を選びます。
カナダの教育の特徴(日本との違い)
カナダと日本の教育の違いはたくさんありますが、今回は「フレンチイマージョンプログラム」においてのバイリンガル教育に視点を向けた特徴を上げますね。
ネイティブの教師が指導
フランス語の授業を受け持つ講師は、幼稚園から高校までの学校で教える資格のある教育学士に加えてフランス語教育学士を取得しています。講師の多くはケベック州のフランス語圏で育ったフランス語のネイティブの教師です。

生徒たちは、先生からネイティブのフランス語を学ぶことになります。
授業で他の言語を使わない
フランス語で行われる授業では、生徒は英語を使うことは禁止されています。多くの教師が生徒が授業中に英語を喋らないかチェックし、金曜日にその週の評価をつけて親に連絡します。あまりにも英語を喋っている場合は担任との話し合いが持たれたり、授業についていけないほどフランス語が理解できていない場合は、校長との話し合いの元、英語学校に戻されることもあります。

生徒がまず習うのは、「トイレに行ってもいいですか?」というフランス語。これが喋れないと、トイレに行かせてもらえません。
フランス語以外の科目もフランス語で習う
日本では英語は英語科目でしか習いませんが、「フレンチイマージョンプログラム」では、フランス語以外の科目でもフランス語を使った授業がおこなわれます。
小学5年生の私の娘の実例を上げますね。午前はフランス語科目、午後は英語科目に振り分けられて時間割が構成されます。
・フランス語での授業科目ーフランス語、理科、社会、保健、体育、ドラマ(劇)
・英語での授業科目ー英語、算数、音楽、図工

こういった教育システムにより、フランス語の語彙の幅を広げることができるんですね。
日本の現状
文部科学省では、高等学校学習指導要領において、「(英語)の授業は英語で行うことを基本とする」と定め、オールイングリッシュの利点を認めています。

将来的に、中学校や小学校でもオールイングリッシュが取り入れられる可能性は高そうですね。
小学3年から実施される英語教育を待たずにお子さんの英語教育を始め、バイリンガルに育てたいと考えている方は、こちらの記事を参考にしてみてください。
まとめ
いかがでしたか?カナダの教育システムを知って、驚かれたことはあるでしょうか。私の子供ふたりは小学1年生からフレンチイマージョンに通い、上の娘が小学5年、下の娘が3年ですが、教師と話をしているのを聞いても、すらすらとフランス語を話しているのを聞いて驚きます。

日本でもこういったスタイルで教育すれば、日英のバイリンガルの子供が多く生まれるかもしれませんね。
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